木目込み人形や押絵、その他和手芸にぴったりの裂地(織物)を常時2000点近く取り揃えています。
人形や小物に合わせやすいように、小柄で柔らかい裂地が中心です。
ひときわあでやかに…金襴
風合も豊かに…ちりめん
物語を紡ぎ出す…友禅
時の流れの愛おしさ…古布
木目込人形を作るときの大きな楽しみのひとつに、裂地(布)を選ぶことにあります。
木目込む(貼り付ける)布によって、同じ人形でも趣はずいぶんと変わり、あなただけのオリジナル人形ができあがります。
さて、裂地にもいろいろな種類がありますが、「金襴」は、特に贅沢で豪華なものです。
「金襴どんすの帯締めながら…」と歌にもあるように、人生に一度の花嫁が着るきらびやかな衣装に使われているのがこの金襴。繻子(しゅす)や綾などの地に、横糸に金糸を織り込んで、華やかな模様を表現しています。
起源は中国の宋で、日本には鎌倉時代に宋へ行ったお坊さんによって伝わりました。お坊さんの豪華な袈裟、あれに金襴が使われていたのですね。金襴は袈裟の他に掛け軸、ひな人形の衣装などに使われています。
人形を豪華に彩りたいなら、この金襴がぴったりですね。
金襴ほどの派手さはないものの、独特の風合いをもつのが「ちりめん」です。
ちりめんはクレープ織りともいい、横糸に強いよりをかけた糸を使い、そのよりの向きを左右交互にすることで表面にしぼ(凹凸)が現れます。有名なところでは、京都府丹後地方の丹後ちりめんや滋賀県長浜市の浜ちりめんがあります。
そういえば、『水戸黄門』の黄門様は、越後のちりめん問屋の主人に扮していますが、当時、越後にちりめん問屋はなかったそうです^^
ちりめんは手触りもよく独特の風合いで、人形の個性を際立たせてくれるでしょう。
友禅は、本来手描きで模様を染色するもので、それだけに豊かな色彩と自由なデザインが特徴です。もっとも現在は型染めのものも多く普及していて、親しみやすい裂地となっています。
友禅の名は、創始者の宮崎友禅斎から名づけられたといわれており、この人は江戸時代の人で京都の扇絵師だったんですね。したがって友禅斎の技法は京友禅と呼ばれ、それが金沢に伝わったものが加賀友禅となりました。
京友禅は柔らかい色調で上品で華やか、一方の加賀友禅は豪奢な色調で優雅で艶やかと言われています。模様も京友禅のほうは、伝統的で様式美に優れたもので、加賀友禅は有名な「虫喰い」など、写実的な表現が多いという違いがあります。
さて、友禅には以上の京友禅や加賀友禅のほかに、江戸で発展した江戸友禅(東京手描友禅)というものがあります。こちらの特徴は、渋く落ち着いた色調に、大都市江戸らしく都会的センスに満ちた模様が特徴です。
友禅は、金襴やちりめんに比べ、一番色彩も模様も多彩で、木目込人形に豊かな演出を加えてくれることでしょう。
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